E-Quest
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EQ-LAB 2.0
演技 Q&A
初級編
Q
「個性がない」と言われる……
A
個性のない人間なんて、誰一人、存在しません!!
演技というものを「自分ではない、他の『何者か』」になろうとしていませんか??
演技する時の感覚は、「自分」のままでいいんです。
誰か、別の人間になろうとして、表面的な演技を考えると、本来の「あなたらしさ=個性」はどんどん失われていきます。
あくまでも、そこにいるのはあなた自身。
では、「自分」と「役」は、何が違うのか??
それは、現実のあなた(今のあなた)と、演じる役の置かれた「状況」が違うんです。だから、台本に書かれた人物は、今のあなたとは違う「行動」を取るのです。
したがって、誰か別の人間になろうとせず、「自分自身」を、今の現実とは違う特殊な状況に置く(想像する)だけで良いのです。
そうすれば、本来のあなた自身の個性は失われることはありません。
そもそも、個性のない人間なんて、いないのですから。
【レッスンでの実践】
スタニスラフスキー・システムでは、「もしも『自分』だったら…?」という、「magic if」(魔法のif)と呼ばれる作業から役作りをスタートし、俳優自身が本来持っている個性を潰さない方法で役作りをします。
Q
セリフがわざとらしい……
A
言葉の「イメージ」を、一生懸命表現しようとしていませんか??
例えば、台本の会話が
A「元気?」
B「うん、元気。」
と書いてあった時。どのように演じますか??
大抵の場合、「元気」という言葉の意味……「イメージ」を、表現しようとしてしまいます。
「『元気?』と聞いているんだから、ちょっと心配そうな言い方をしたほうがいいのかな??」
「『うん、元気。』と答えてるから、元気そうに答えるべきだよね。」
……そうした、台本の言葉(テキスト)のイメージを表現しようとしてしまうと、きっと、子供演劇見たくなっちゃいますよね??
わざとらしくなります。
でも、実際の人生のこと、考えてみてください。
「元気?」って聞いていても、内心は「…うわ、こいつに会いたくなかったな」って思ってたり。
「うん、元気。」って答えていても、内心は「こいつ、こないだ貸した100円のこと、忘れてんじゃないのかな…??」って考えてたり。
言葉というのは、必ず、その裏側(サブテキスト)が存在します。
そして、人間は、表面上の言葉(テキスト)よりも、むしろこの「サブテキスト」で会話をしている、と言っても過言ではありません。
つまり、この「サブテキスト」の存在があるからこそ、言葉はリアルで生き生きとしたものになるのです。
【レッスンでの実践】
クラスで最初の頃に行うエクササイズでは、この「サブテキスト」が自然と発生し続ける俳優の楽器づくりを行います。
Q
台本の読み方がわからない……
A
役は何をしたがってるか?(欲求)、
そして、それを阻むもの(障害)
台本は、読み解きやすいものから、難解なものまで、さまざまです。
しかし、一貫して言えるのは。
主人公はたった一つの「欲求」を持ち(貫通行動と言います)、そこに向かおうと進んでいくのですが、それを阻む「敵」(障害、反行動と言います)が現れ、それらがぶつかり合うことでドラマが起きる。
……この、単純な方程式に集約されます。
そして、役の貫通行動は、途中で変化することはありません。
そうした、演劇の「方程式」を知ることで、台本の読み解くスピードは格段に早くなります。
また、台本を読み解くためには、それ以外のお約束(ドラマツルギー、作劇技法)を知っておくことも有効です。
例えば、あるシーンで役が一番言いたいこと(本音)は、そのシーンの最後の方か長ゼリフの中にあります。初めの方は、基本的には、本音ではなくタテマエをしゃべっています。
(実人生の会話でも、大抵そうですよね??)
台本の言葉は、作家が色々飾りをつけていたりするので、読むときに混乱してしまうんです。
いくつかの作法を知っていれば、やはり、読み解くことがもっと楽になります。
【レッスンでの実践】
「役は何をしたがっているか?」という、俯瞰した読み方ができるように稽古を進めます。
Q
緊張してしまう……
A
緊張は、才能の証拠。
必要なのは、自分を “見ない” 訓練。
まず。
緊張のもとになっているのは「想像力」です。
「失敗したらどうしよう…」と言った想像が、緊張を呼び起こします。
つまり。
「緊張する」=「想像力がある」ということ。
俳優には、想像力が絶対に必要です。緊張するということは、その素質を備えているということです!!
そして。
なぜ緊張するか? を、もっと掘り下げると、その正体は「自意識」。
「自分がうまくやれているかどうか」という、自分への意識が、緊張を必要以上に高めてしまいます。
だからまずは「自分を “見ない” 訓練」(ノンジャッジ)を行います。
でも「自分を見るな」と言われれば言われるほど、その「自分」が気になりませんか??
だから「自分を見ない」に意識を回すのではなく「相手(演技の対象)に100%注意を向けて、自分に向かう注意力を無くさせる」という訓練方法が必要です。
この意識の使い方が、演技をする上での土台となります。
【レッスンでの実践】
常に、相手(演技の対象)に注意を向け続け、相手の一挙手一投足を一瞬たりとも見逃さないような訓練をします。
その結果、相手とのコミュニケーションはとても密になり、演技がリアルになるのです。
(実人生では、無意識で、相手への注意をそのくらい強く持っています。)
Q
相手を「見る・聞く・感じる」ができない……
A
相手を「見る」ためには、自分を「見ない」。
「緊張してしまう…」という項目でも書いた通り、基本は「ノンジャッジ」(自分を見ない、判断しない)です。
その理屈を理解するために「脳は同時に2つのことはできない」という大原則を知っておきましょう。
脳は、相手を見れば見るほど、自分を見なくなる。
逆に、自分を見れば見るほど、相手を見られなくなります。
「今、自分はうまくやれてるかな…?」などと、自分を見てジャッジをしようとすると、同時に、相手への注意は薄れ、相手を見れなくなります。
「聞く」ということも同様です。
そして。
自分を見れば見るほど、ジャッジをすればするほど、脳の構造上、感情は出づらくなります。
少し、簡略化してお話しすると。
自分を見て、ジャッジをすると「自意識」が働きます。
この「自意識」が働いている時は「感情のない脳の分野」が発動しています。
しかし、相手に注意を払って自意識を消していくと、脳の働きは「感情を司る分野」へと移行してゆきます。
つまり、相手を「見る・聞く」ができてくると、自然と「感じる」ことができるようになっていきます。
【レッスンでの実践】
「ダメ出し」をすると、どんどん自意識が働きます。
むしろ、自由で楽しめる環境ほど「無我夢中」になれます。……文字通り「無我(我を忘れる)=自意識のない状態」です。
そのためにも、稽古場は、気楽で楽しい雰囲気づくりを心がけています。
Q
お客さんや演出家が気になる……
A
気にしないようにすると「気になる」という、脳の修正を知ろう。
「気にしないようにすると、かえって気になる」というのは、普段の生活でもよくある話ですね。
例えば「ゴルフボールのことを『考えちゃダメ』だよ」と言われたら、自然とゴルフボールが頭に浮かんできてしまったりします。
潜在意識は「◯◯しちゃダメ」といった命令は理解できません。
そう思考では思っても、脳は「◯◯」にフォーカスする、ということだけを実行してしまうのです。
つまり「演出家や観客を意識しちゃダメ!」と脳に命じれば命じるほど、演出家や観客に「フォーカス」(注意を向ける)してしまうのですね。
したがって、もしそうしたことが気になる場合、むしろ「気にしてもいい」と許可し、演出家や観客がいることを受け入れてみてください。
すると、自然とそこへのフォーカスが解け、いつの間にか気にならなくなっていますよ。
これは、雑音なども同じです。
例えば、稽古場で誰かがお菓子をボリボリ食べていても、その現実を脳から締め出そうとせず、それでいいんだと受け入れてあげてください。
【レッスンでの実践】
「自分ではない、他の『何者か』」になろうとするのではなく、自分はあくまでも自分であり、今はこの稽古場にいるんだ、ということを全て受け入れた状態で演技をスタートします。
『何者か』になろうとすると、途端に、今いる「稽古場」という状況が台本とそぐわなくなり、そのありのままの状況を締め出そうとするからです。
例えそれがシェイクスピア劇であったとしても、最初は「いま、ここにいる自分自身」からスタートできるように訓練します。
Q
自分は、想像力が欠けているんじゃないか……
A
安心してください。
そんな人は、いません!!
……って言っても、やっぱり心配な人もいますよね??
「他人よりも、想像力に乏しいんじゃないか」
「演じようとしても、その虚構の世界が信じられない」
「自分には、感情がないんじゃないか」
そうした悩みを持っている人は、案外多いです。
では、聞きます。
あなたは、映画を見ても、一度も感動したことはありませんか??
音楽を聴いて、ジ〜ンときたことのない人は、いますか??
緊張や不安に襲われたり、腹立たしくなったことは一度もないですか??
これらは全て、感情であり、あなたの想像力の結果です。
「……でも、それって全部、現実の世界の話だよ」
と言われるかもしれませんね。
そうなんです。
演技をすることを「自分ではない『何者か』になることだ」とか「想像をするということは、この現実とは違う『ウソ』を本当のように感じなくてはいけない」といった、演技に対しての誤解が、想像力や感情をストップさせてしまっているだけなのです。
また、役をもらって責任感を抱いてしまうと「想像力を働かせなきゃ」と義務感が強く働いてしまったりして、その道を塞いでしまう場合も多いです。
プライベートで映画を楽しむ時と同じリラックス状態、無責任な状態でいることが、想像力や感情を動かす時には必要になります。
【レッスンでの実践】
義務感をなくし、脳裏に思い浮かんだ想像力に自由について行ったり、感情に乗る訓練をします。
また、心を動かすための「想像の仕方」には、ちょっとした技術があります。
その技術については、繰り返し何度もエクササイズを重ねていきます。